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多摩の大事な橋なのです

戦略広報課です。
このnoteでは一見地味にみえる都政、でも都民のくらしに欠かせない都政もピックアップしていきたい、という気持ちがあります。(今日ははじめからマジメです)
約16年間という長い時間をかけて架け替えの工事をしている橋があります。その名は「関戸橋(せきどばし)」

長い長い工事はじまり

京王線聖蹟桜ヶ丘駅と京王線中河原駅の間に位置し、鎌倉街道が多摩川を渡るところに架かっています。多摩市と府中市を結ぶ、とても重要な橋です。通ったことがあれば「ずいぶん長く工事してるな」と思った方もいるのでは?いま工事が始まって8年。やっと折り返し地点に来たところです。

仮橋工事着工前 

関戸橋は1937年に完成した下流橋と1971年に完成した上流橋で構成されています。
上の写真、左側の下流橋が架けられてから約80年が経ち、老朽化が進んで架け替えが必要になりました。

むかしの姿は

関戸橋の成り立ちを少々。江戸時代、川に橋を架けることは大変難しいことでした。なので当時の多摩川では舟を使って人や荷車、馬などを向こう岸に渡していました。
橋が架けられている場所の多くは、古くから交通の要となっているところです。関戸橋付近にも関戸と中河原を結ぶ鎌倉街道の渡し場「関戸の渡し」がありましたが、1937年に関戸橋が架けられたことで「関戸の渡し」は廃止に。そして高度経済成長期での交通量増加に伴い、上流橋が整備されたのです。

昭和12年当時の関戸橋
関戸の渡し
上 2 点 出典:1990 パルテノン多摩ミュージアムライブラリー 写真で綴る多摩 100 年

どうして重要なの?

昭和後期、多摩川中流部(立日橋~多摩水道橋)には車の通れる橋が「5橋」しかありませんでした。
その当時、橋に車が集中し深刻な交通渋滞が発生しました。しかしその後、多摩川中流部の橋は「9橋」にまで増え、交通渋滞は大きく改善しました。
昭和から架かっている「5橋」の1つ「関戸橋」も多摩川中流部のちょうど真ん中にある、なくてはならぬ橋。工事だからといって機能しなくなればまた、渋滞を引き起こしてしまいます。そこで仮の橋が必要となります。

全部なくなっては困るので

架け替えでまず始まったのは、仮橋の工事です。

多摩川中流部の9橋

仮橋の工事は河川の水位が低くなる渇水期(11月から5月)に行います。
2016年1月から着手され、約3年の年月がかかりました。
仮橋2年目の工事では、元々水が流れている箇所にも橋脚を設置するため、多摩川の中洲付近で川の流れを切り替える「瀬替え(せがえ)」が行われました。瀬替えとは施工箇所に水が進入しないよう水の流れを切り替え、別の場所に流れを作ることです。これが結構大がかりな工事。やはり水の少ない渇水期にしかできません。

瀬替え作業の様子

仮橋ができた!

2018年10月、仮橋が完成。同年11 月から古い橋の撤去工事がスタートしました。
撤去工事では橋げたを切断し、大型クレーンで吊上げ撤去を行いました。こうして2021年5月までに地域のシンボルだった初代関戸橋が多摩川から姿を消したのです。

橋げたを大型クレーンで持ち上げ撤去する

いろいろ貴重な財

初代の関戸橋は歴史的にも貴重な財産です。建設当時、コンクリート製の橋げたをいくつも連結させた形式の橋としては国内屈指の規模でした。また橋脚ごとに橋灯付きのバルコニーを持つデザインも珍しいものでした。

橋灯付きのバルコニー

初代関戸橋はそのたたずまいでも地域の人に愛された橋です。撤去に伴い地域住民の要望もあって、橋の名称を表している橋名板(親柱含む)、バルコニー、欄干部などを、ろくせぶ公園(多摩市)、中河原公園(府中市)にそれぞれ保存し、訪れた人が当時の橋を偲ぶことができるようにしました。

自然を壊さないように

またこの工事では周囲の自然環境にも配慮した取り組みをしています。
関戸橋付近は日本でも有数なアユの漁場でした。いまでもアユが11月下旬頃に川を下り、4月中旬頃から遡上しています。そのため毎年環境調査を実施し、アユの降下と遡上に影響が出ないように、またコイやオイカワなど魚類の生育状況を確認しながら工事を進めているのです。

投網などにより魚類の調査を行います
遡上するアユ

橋周辺の河原には貴重な動植物も数多く生息しています。
たとえば「チョウゲンボウ」というハヤブサ科の鳥。
河川敷の草地などで見かけることがあり、春から夏にかけて崖や橋脚などに巣を作ります。東京都レッドリスト【注】の「絶滅危惧Ⅱ類」に区分されている鳥でもあり、橋近くで繁殖や幼鳥の巣立ちも確認されているため、細心の注意を払って工事を行っています。
【注】「東京都レッドリスト(本土部)2020 年度版」(地域区分:北多摩・南多摩)

関戸橋(上流橋)の巣にいたチョウゲンボウの幼鳥。カワイイ

鮮やかな黄色い花をつけているのはバラ科の多年草「カワラサイコ」
花の直径は1センチ程度の小さい花でこちらも河原で見かける植物。やはり「東京都レッドリスト(本土部)2020 年度版」で保護上重要な野生生物種に指定されています。
現場で確認されたときは、工事の影響を受けない場所に移植しています。

完成イメージ。こんなきれいな夜景が見れるのかも。。

橋の架け替え作業ではこのようにいろいろな配慮をしながら建設を進めています。
長期間にわたる架け替え工事ですが、その分、完成も楽しみです。みなさんも見守っていてくださいね。

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