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コロナ&一般診療両立しつつ 荏原病院

広報広聴課です。
前回に引き続き、都立病院の新型コロナ対応の様子をお伝えする第二回目です。


朝はコロナ会議から

大田区にある都立荏原病院の朝はコロナ対策会議から始まります。医師・看護師など各部門の担当者が集まり、今日の患者の様子や入退院数などを共有し意思疎通をはかります。

荏原病院外観
朝イチで行われたミーティング

たくさんの応援を受けて

ミーティングルームには応援のメッセージや千羽鶴が掲示されている

荏原病院の歴史は古く1898年(明治31年)、世田谷に伝染病の病院として開設され、その後現在地に移転、総合病院として地域に根差してきました。

荏原病院もコロナには大きく揺り動かされました。2020年の1月、武漢からの帰国者を受け入れた病院の一つでした。以来たくさんのコロナの患者さんを診てきました。

コロナで大変になったこと

「しかし、そのために本来の専門医療ができなくなりました。専門診療をやりたいと使命感を持って就職してきた医師たちのモチベーションも下がってしまいました。また医療人材を育てることも難しくなりました。通常ですと一般診療のトレーニングを積むために大学医局から医師が派遣されますが、コロナの診療に重点を置くことで医師が集まらなくなっています。病院の機能を本来の様子に戻すため今年4月からはコロナと一般診療の両立を目指していこうと努力しています」と芝祐信院長。

野津史彦副院長に、これまでのコロナ対応で大変だったことを振りかえっていただきました。

コロナの患者退院後の清掃をしているところ

「第5波では働き盛り世代の患者さんが多く、午前中はふつうにお話しができたのに午後には重症化したり。医療スタッフを重症患者中心の配置へ変更したため、入院可能な患者さんの枠をしぼることになり受け入れを断らざるを得なくなりました。また人工呼吸器を最大10台稼働させましたが当院にECMO【注】はありません。転院先を探したけれどどこもいっぱいで受け入れてもらえず『当院で行える治療の範囲で、できる限りのことはします』と患者さん・ご家族にお伝えして了承いただきましたが、心苦しい対応だったことをおぼえています。
特に第6波、7波では入院患者の中で特に高齢者の割合が高くなりました。
認知症で動ける患者さんは自分がコロナだと理解できず部屋から出てしまいます。看護師が説得して戻したり、精神科の先生にも治療などの対応をしていただきました。他に排泄物の処理や食事介助(患者さんはマスクを着用しない状態となる)など現場の負担は大きかったです」
【注】「人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療」を行う「体外式膜型人工肺」

写真の機器で使用後の部屋を紫外線照射し殺菌消毒

サポートの要

患者・地域サポートセンターでは看護師やソーシャルワーカーなどが患者の医療相談や入退院の支援などをサポートしています。コロナ患者受入などの調整もここで行います。また退院後の行き先などを探すのも役目のひとつ。
看護師長の佐谷さんとソーシャルワーカーの増井さんにお話しを聞きました。

佐谷さん

「精神的に一番きつかったのは第5波のときです。40~50代の若い世代の患者さんで(人工)呼吸器が必要な方が多く、ICU以外にも呼吸器管理が病棟で必要となりました。『これは経験したことがない、災害レベルだな』と思いました」と佐谷さん。

増井さん

増井さんは患者の退院後の調整に苦労したと言います。「高齢の方で家に帰れない方などの受け入れ先を探すのはとても苦労しました。施設や病院のスタッフに陽性者が出ると、受け入れてもらえませんでした。電話をたくさんかけてやっと調整できる、といった状況でした」
今一番何がしたいですか?と聞くと「みんなで食事くらいは行きたいなと思います。コロナが収まったら『がんばったよね』の食事会をしたいなと思いますね」

一般診療にも戻ってきてほしい

荏原病院では院長のお話にもあったように、一般診療にも力を入れていきたい、と考えています。その一つが産科です。

越沼さん

産科病棟を看護師長・越沼さんが案内してくれました。
分娩間近で入院してきた人はまずPCR検査を受け、結果を個室で待ちます。もし陽性だった場合は帝王切開に。患者さんがいた部屋は紫外線照射で消毒、部屋全体を除菌し、カーテンも交換します。
「授乳室なども今は閉じています。以前は母乳指導など一斉に行っていましたが、コロナになってからは各自部屋で対応してもらっています」

ここが分娩室。感染予防の意味で分娩介助する人は防護服で対応する

助産師の柿谷さん 「コロナの影響もあって分娩数がだいぶ減ってしまいました。また戻ってきてくれるよう、みなで努力していきたいです」

この「白い巨塔」のような画像はなんだと思いますか。精神科の医師や看護師、薬剤師、心理士などで形成される「リエゾンチーム」のスタッフたちです。術後のせん妄に悩まされる人や認知症の患者さんなど、他の科から依頼のあった人の回診を行い、薬の調整などを話し合います。院内横断的に活動する荏原病院の特徴のひとつです。

ベッドサイドで様子を見るチームスタッフたち

精神科の認定看護師・高山さんに精神科ならではのコロナ対応の大変さを聞きました。

「精神疾患を持つ患者さんは『コロナの感染』ということだけでも反応してしまったり、わたしたちが防護服を着ているのを見るだけで不安になってしまいます。そういうときは普段通り接して『大丈夫ですよ』と声掛けして安心してもらいました」
今一番したいことは?と聞くと「海外旅行に今すぐ行きたい!」

荏原病院で働く方々の素顔も交えた様子、いかがでしたでしょうか?当たり前のことですが、病院ごとに雰囲気も異なります。前回の多摩北部医療センターとはまた違った荏原病院の魅力がありました。みなさんステキな方たちでした。
仕事とはいえ、大切な職務を果たしていらっしゃるスタッフのみなさんが、リフレッシュもしながらお仕事をしていくことができますように、と願っています。

都立荏原病院


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