農業が好き。好きなことができるって幸せなこと 第一回 目黒・小平編
広報課です。
「東京で農業をやりたい」という人が増えていると小耳にはさみました。しかも若手が多いらしい。令和2年農林水産省の調査によると農業分野へ新規参入した人は、全国で約3500人。10年前の約1.7倍。
そういえばスーパーでも「都内の○○さんの作った野菜」とかレストランの店先にも「○○さんの作った野菜を使っています」などチラホラ見かけます。駅ビルのおしゃれなお店の店頭にもかっこよくディスプレイされた野菜セットが置かれていました。
こういう光景、最近増えているように思います。そこで東京農業はいまどんなことになっているのか、いろいろなところで聞いてみることにしました。
新規就農者に会いたい
新規就農者といってもいろいろな方がいます。農業とは全然別の畑からやってきた人、代々実家が農家で継いだ人など。3名の方にお話しを伺いましたので二回に分けてお届けします。
目黒 栗山ファーム
一人目は目黒の自由が丘で農家を継いだ栗山貴美子さん。
自由が丘駅から住宅街を抜けてしばらく歩くと栗山さんの畑がありました。こんな都会に農地が、とまずはびっくり。その日は近くの保育園の園児たちが畑体験をしに来ていました。大根を抜いたり、とても楽しそう。
栗山さんの作る大根は地域でも人気
直売所での販売やレストランに卸したりもしていますが、こうした子どもたち向けの農業体験も時々しています。また目黒区が行っている地産地消の取組にも参加しています。これは区内の農家がJAの協力のもと、区立の小・中学校などへ給食食材として大根を寄付するという取組です。都会ならではの活動だなと思わされました。
栗山さんは元は農協の職員でしたがおじい様が他界された後を継ぎ、今年で5年目になります。調布のトマト農家で研修を受けながら畑を始めました。「失敗や苦労も多いですが、運搬補助の農業ロボットの試作などにも関わらせていただきました。気にかけてくれる方がいて輪が広がり、苦労の中にも解決があります。そういった関係性を持てることが一番うれしいです」
畑に隣接している直売所で作業
「この辺は住宅地だし人がたくさん居る地域なので、直売所の野菜ももっと欲しい、といわれます。時々臨時でお手伝いの方に助けていただき、いろいろな人に関わってもらいつつ、社会貢献もしながら長く維持していけるといいなと思っています」
小平 OKファーム
次に訪ねたのは小平市の大原賢士さん。当日は愛娘日和ちゃんと。
「子どものころから自然や昆虫などが好きで」と話す大原さんは生まれも育ちも港区という根っからの東京人。農業高校、農業関係の短期大学に進み、社会人になってもやはり農業に関心があったそうです。「農業がやりたい」と就農支援事業をしている一般社団法人東京都農業会議に相談し、瑞穂町で2年間研修を受けることになりました。
妻の仕事の関係もあり、小平市に転居することになりました。しかしここで難題が浮上。農業を営むには農地を借りる必要がありますが、小平市の畑はすべて市街化区域【注】にあり、就農するには生産緑地を借りるしかなかったのです。
【注】宅地化を前提として開発可能な市街化区域と、緑地を残し開発を抑える市街化調整区域とが区分されている。
大原さんの借りている畑
生産緑地とは?
東京や大阪など三大都市圏を中心とした市街化区域の農地のうち、所有者の申請により生産緑地の指定を受けると農家は30年間農業を続ける必要がありますが、固定資産税減免の優遇措置があります。
2018年9月1日、都市農地貸借円滑化法が施行され、生産緑地の貸借が現実的に可能になりましたが、大原さんが小平市に転居したいと思った時期は法改正前。生産緑地を借りることはほぼ不可能な時期でした。
アルバイトしながら法改正を待とうとした矢先、生産緑地を貸してもいいという方が現れたのです。
アートな野菜 カリフラワーの一種「ロマネスコ」も栽培
野菜の自動販売機も今年9月から都の補助事業を使って導入しました。小平で農業を始めて今年で3年目ですが収益は上がっているそうです。
自販機を導入してから盗難が減ったそう
こうして大原さんは無事に小平市で生産緑地を借りることができました。さらにほかの生産者からも農地を借り、いま合計で約65アール(1アールは100平方メートル)の畑で露地野菜を生産しています。「自分は新参者ですが、地域になじんでいけたらいいなと思っています」と話してくれました。