「教えて!大曲先生」〝ウイルスが細胞にくっつかないようにする〞抗体カクテル療法
東京都広報課です。
いまよく耳にする「抗体カクテル療法」。コロナの治療法として注目が集まっていますが、いったいどんなものなのでしょう。国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲貴夫さんに教えていただきました。
(9月9日取材)
抗体カクテル療法とはどんな治療法?
コロナウイルスが人間の体の中に入ってきて、鼻やのど、肺の細胞にウイルスの一部分がくっつくと感染してしまいます。抗体カクテル療法は、ウイルスが人間の細胞の表面のところにくっつかないようにするものです。
ウイルスの中で飛び出ているところをSタンパクと言います。抗体カクテルはこの Sタンパクの表面にくっつきます。この抗体カクテルのついたSタンパクが邪魔になり、ウイルスは人間の細胞にはくっつかなくなります。
人間の体の中の免疫は、いろんな細胞がこうしたウイルスとか菌を消したりして働いているんですけど、こうやってウイルスの周りに抗体がくっつくと免疫の働きに捕まるんですね。そうしてこのウイルスは免疫の細胞で消されていきます。
その結果患者さんは感染した後でも、抗体カクテルを使うことによって、早くよくなっていくし重症化するのを防ぐという薬なんです。
どうしてカクテルというの?
今出ている薬は2種類の違う抗体を混ぜ合わせているので、カクテルと呼んでいます。
どのような効果があるの?
コロナの感染症っていうのはおおむね2割前後の方が、急に途中で症状が悪くなって酸素が必要になることがあるのですが、一番はそれを防ぐ効果があるということなんです。
この薬を開発するときの研究では、薬を使わない場合は新型コロナウイルスに感染した1,000人ベースで30人が重症になったということでした。でも、この薬を使うと10人しか重症にならなかったということなので、重症になるリスクはだいたい70%ぐらい減らせるということがわかったんです。
やっぱり重症にならないというのは一番大事なことです。
またもう一つ副次的な効果ですけれども、この薬を使った場合の方が、使わなかった場合よりも熱が下がるまでの期間が短いですね。そういう効果もあります。
治療の対象になるのはどのような方?
実は受ける基準があって、医師が判断をしているのですが、これはあくまで重症になるのを防ぐためのお薬です。ある程度重症になってからだとちょっと遅いと言われています
軽症またはまだ酸素が必要になる程度まで悪くなっていない、そういう患者さんに使うというのがひとつの特徴です。
患者さんの持病や年齢でもある程度決まっています。
この薬の臨床試験をやったとき対象となったのが50歳以上の方でしたので、年齢は50歳以上。
あとは年齢に関係なく持病のある方です。糖尿病、心臓病、肺の病気、免疫の落ちるような病気の方を対象に臨床試験を行っていますので、この薬の対象は50歳以上や、持病のある、軽症など酸素が必要でない方になります。
具体的にどんな治療をするの?
20~30分かけて点滴をします。その間とその後、医療従事者がしっかりと観察します。
副反応は?あるとすればどんな反応?
抗体カクテルも薬の一つなので点滴した後に体に普段とは違う変化が出ることはあります。
アレルギーが出る方もたまにいらっしゃいます。
僕の患者さんでもありました。多くの場合程度は軽くて、じんましんが出るとかその程度の方もいらっしゃいます。怖がらせるつもりはないですが、こうした抗体の点滴をすると血圧が下がったりすることがあります。
医療従事者は、そういった薬を使うときには副反応が起こりうるということをよく分かっているので、特に新しくでた薬でもあるので、投与する時はとても慎重になります。
急に重いアレルギーが出てもすぐに対応できるよう準備をしていますので、その点はご安心いただければと思います。
都民のみなさんに
コロナウイルスは、かかるととても辛くて大変なこともあるので、やはり1番オススメするのはかからないように、とにかく予防を頑張るということです。かかってしまった場合でも、重症になるんじゃないかと大変心配だと思いますが、以前はやれることがなかなかなかったんですけれど、この薬を使えば重症になる可能性をかなり下げられるので、そこはもうご安心いただきたいし、またそういう治療があるということをぜひ知っていただきたいです。
もしこの治療を受けるような場合は、医療従事者がきちんと対応しますので安心して受けていただければと思います。