東京農業のいま  援農ボランティアで農家を助ける
見出し画像

東京農業のいま  援農ボランティアで農家を助ける

都庁の立つ西新宿界隈は見渡す限りの高層ビル群。ほかに渋谷、六本木などを見てもかつてこの国の民が農耕民族だったことを思い出すことはほとんどありません。
農地は作物を作る以外に、四季折々の自然の移り変わりを通して人々の心に潤いも与えてくれていました。

昭和60年、12,500ヘクタールあった都内の農地は平成30年には6,790ヘクタール。昭和35年に約5万人いた農業者は平成27年には約1万人となり東京農業の規模は縮小してきました。【注】
【注】東京都の農林水産統計データ(令和元年度版)https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/nourin/

このような状況ではありますが、いま農業に関心を持ち農家をボランティアで助けようとする人たちが増えてきています。このボランティアを「援農ボランティア」といいます。

画像19

援農ボランティア見に行ってみた

田んぼの脇を抜けて丘をあがると、明るい陽射しの中に畑が広がっていました。野菜畑の横にはユズやキンカンなど冬に実を結ぶ果樹が並び、その向こうには観光ブルーベリー農園が広がっていました。

画像19

12月なのに暖かく、少し動くとじんわり汗ばむほど。午前中の9時から12時までボランティアのお二人が農作業を手伝いました。この日の作業は小松菜の種まき、ダイコンの間引き、肥料やりや畝(うね)づくりでした。
小松菜の種はほんの2ミリくらい。その小さい粒を少しずつ手にとって、耕したふかふかの土に落としていきます。地道な作業なので一人で蒔いたらだいぶ時間がかかりそうです。

画像19

画像19

会社勤めをやめて

石坂ファームハウスはさまざまな農作業や農家の昔ながらの行事などを体験できる農園です。担っているのは石坂亜紀さん。子ども時代から両親の大変さを見て育ち農業を敬遠してきました。大学卒業後は会社員になりましたが一日中ビルの中にいて天気もわからない生活に疑問を持ち、25歳で会社勤めを辞めてこの世界に。
「3年前、大黒柱の父が亡くなり、どうしよう、農業を続けられるだろうかと不安もありましたが、止めようとは思いませんでした。父と一緒にやってきた20年の経験で自信もついていました。今度は自分が主体となって規模を小さくしてもやっていきたいと。援農ボランティアの方が来てくれるから続けられると思っています。今日の種まきだって一人だったら何往復もしなければいけない。本当に助かっています」。

画像19

一粒ひとつぶ丁寧に種まき

画像19

画像19

収穫したピカピカのピーマン

ここでは体験農業などのほかに、60歳以上の人たちの居場所としての高齢者向け体験農園も運営しています。亜紀さんの母・昌子さんは「昔の農家は年をとっていても家の作業などやることがいろいろありました。でも今、わたしの周囲の高齢の人たちは、行くところは病院しかないと言います。農園はそういう人たちの居場所になるし、自分で育てた安全でおいしい野菜を食べて元気になるんじゃないかと考えたのです」。

画像19

                              石坂亜紀さん(右)と昌子さん親子

いま東京の農業は

近年、農業に対して「生産者の顔が見たい」「安心安全な農畜産物がほしい」という消費者の声があります。
また都市部の農地の役割として災害時の避難場所、ヒートアイランド現象の緩和、子どもへの食育の場などが期待されるようになりました。
一方で、担い手の高齢化、宅地並みの固定資産税や重い相続税による農地の減少、安い輸入農産物との価格競争による国産農産物の価格低迷など、農業関係者だけでは解決できない課題も抱えています。

画像19

画像19

画像12

出典:令和2年度第1回インターネット都政モニターアンケート
「東京の農業・水産業」(生活文化局)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/09/01/01.html

新しい経営スタイルを目指す農業者の増加

このような中ですが、いくつかの明るい兆しもあります。意欲のある農業者が地域の特性をいかした経営を展開しているのです。石坂ファームハウスのように都心に近い利便性を活かし、体験イベントや高齢者向け農園、観光農園などを組み合わせて行う経営も新しいスタイルといえます。

画像19

需要が伸びる体験農園

新たな経営形態として注目される農業体験農園は、農業を体験したいという人々のニーズにマッチし、都市地域を中心に平成31年度末現在106か所開設されています。
令和2年6月に東京都生活文化局が実施したインターネット都政モニターアンケートによると、「東京に農業・農地を残したい」と回答した人は82.8%にものぼります。

画像14

出典:グラフィック 東京の産業と雇用就業 2020(産業労働局)
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/sangyo/graphic/2020/
P.29「農業体験農園数の推移(東京)」

画像15

出典:令和2年度第1回インターネット都政モニターアンケート
「東京の農業・水産業」(生活文化局)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/09/01/01.html

画像19

紅葉したブルーベリーの木

大事なことを知った

今回紹介した援農ボランティアも東京の農業の多様な担い手のひとつです。この日参加したお二人のボランティアの方にお話しを聞きました。
歩いて10分くらいのところにお住まいの女性は、週1程度のペースで参加しているとのこと。
「今まで土に触れることはほとんどない生活でした。散歩しているときたまたま石坂さんの直売所でボランティア募集のパンフレットを見ました。コロナで仕事が減り時間ができたので来てみたんです。ふだん食べているものはこうやって出来るんだ、食べものは本当に大切だなと実感しました。その食べものを作る農家も守らないといけない、と気づくことができました」。

画像18


中央区から時々来ているという男性は「ふだんは美容師をしています。PCを検索して見つけました。(やってみて)メチャメチャいい。普段ビルしか見てない。土や畑と接する機会がない。パソコンを見ているのと土に触っているのとでは自分の普段の状態がぜんぜん違います。土を掘ってると虫が出てきたりして感動する。食べるって一番大事です。車がなくても生きられるけど食べものがなかったら生きられない。その食べものがどのくらいかけて育つのかとか知ることができる。これはみんなやったほうがいい」と話していました。

亜紀さんからボランティアをやってみたいけど迷っている、という方に向けて一言。
「初めてで不安な方もいらっしゃると思いますが、簡単な作業もあるし、わたしたちも詳しく説明するのでぜひいらしてください」。

【ボランティア新規登録者数・累計数】

キャプチャ

出典:「農作業サポーター・ボランティア取り組み事例集」より情報抜粋(東京都農林水産振興財団)https://www.tokyoaff.or.jp/book/list/book18.html 

ボランティアに参加するには

都内の主な援農ボランティアには、区市町村ごとに行う「地域援農ボランティア」、公益財団法人東京都農林水産振興財団が区市町村枠を越えて都内の農地を対象としてボランティアの募集と派遣を行う「広域援農ボランティア」があります。
「食」はわたしたちの生命に欠かせない大切なものです。
その「食」の源である農業を応援していく必要があります。農業の経験がなくても大丈夫です。東京の農業を応援する援農ボランティアをやってみたい、という方はこちらまでお問合せください。

地域援農ボランティア募集・問合せ→
https://agrivolunteer-tokyo.jp/region_volunteer/inquiry_list/
広域援農ボランティアの応募など→
https://agrivolunteer-tokyo.jp/
東京農業についてもっと知りたい→
「東京農業振興プラン」
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/plan/nourin/3f33a4ec579b9a8cb1e4a86d57e86c50.pdf

画像17






ありがとうございます。励みになります!
東京都広報課が管理する東京都公式noteアカウントです。