13年という大工事 都庁改修工事を追ってみました
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13年という大工事 都庁改修工事を追ってみました

都庁舎といえば西新宿の顔のような存在です。
平成3年4月に開庁してから早いもので30年が経過しました。設備機器の更新時期を迎え、24年4月、都議会議事堂から改修工事が始まりました。すべて終了するのは令和7年3月の予定。13年間という長い期間です。
工事があるからといって都庁の機能を止めることはできません。人の出入りがある中で執務室などの閉鎖や移転を順次繰り返しながら行う、大規模かつ長期にわたる改修工事は例を見ません。
平成23年に起きた東日本大震災のとき、都民が都庁舎に集まり、災害時防災拠点としての重要性が改めて認識されました。
設備更新に加え震災から得た経験や教訓を基に、電力調達方法の見直しや耐震対策も強化しました。今回はこの巨大プロジェクトの様子をお伝えしたいと思います。

都庁舎の規模は?

まず都庁舎がどれくらいの規模か、読者の皆さんに知っていただきましょう。
第一本庁舎、第二本庁舎、都議会議事堂を合わせて、敷地面積42,941.05平方メートル、延床面積381,691.52 平方メートル。と聞いてもピンとこないかもしれません。東京ドームが46,755平方メートルといえば目安になるでしょうか。都庁舎は縦に長く、たくさんのフロアがありますから延床面積は相当なものです。

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収容職員数は3棟合計で約 12,200人。(第一本庁舎:約 6,300 人、第二本庁舎:約 5,600 人、都議会議事堂:約 300 人、令和2年 8 月現在)
これだけの職員が働き、来庁者が訪れる庁舎をもっとも安全に快適に保つ必要があります。

どれくらい劣化?設備機器

平成3年から使っている設備機器にも故障が増えてきました。庁舎内の天井裏や機械室に設置されている空調機は約 1,000 台。そのうち約 7割は、機器製造会社が更新の目安として推奨している6 万時間を超過していました。

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各種配管、水槽、ポンプでは、一部に腐食が発生し、特に給排水管、トイレユニット設備は、腐食による錆コブの発生や管の肉厚減少、ライニング材と呼ばれるコーティングの剥離など、経年劣化が進み水漏れなどの故障が数多く発生していました。

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錆コブの発生

また照明設備や開庁時から継続して動いている蓄電池設備など、経年劣化による故障が増加。また各設備の構成部品などは生産中止となるものもあり調達が困難になっています。

設備別の故障・保全件数(H11~23)

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地震に備える 東日本大震災の経験を活かす

都庁舎はスーパーストラクチャー構造【注1】を採用し、建築基準法にもとづく超高層建築物の大臣認定を取得して建設されました。また設備機器なども高度な防災・消防設備や、それらの監視装置などを導入し総合的な防災庁舎の先駆けとして維持管理してきました。
しかし、平成23年3月、東日本大震災が発生し、都庁舎は経験したことのない建物の揺れやエレベーターの長時間停止を経験したのです。

【注1】
スーパー柱とスーパー梁で構成された建物構造。スーパー柱は 1m 角の箱型鉄骨柱4本を 6.4m 角の四隅に配し、それらを梁やブレースで結んで大きな柱を構成したもの。スーパー梁はスーパー柱と同様に4本の鉄骨梁とブレースで構成され、スーパー柱同士を緊結する大きな梁

■都庁の被害状況と課題

地震による構造体や外壁の損傷などはありませんでしたが、長周期地震動【注2】と呼ばれるゆっくりとした揺れが長く続く振動が起こりました。また第一本庁舎と都民広場との間にある11 号街路下天井材の一部脱落、第一本庁舎8階機械室内、議事堂6階空調機械室などの漏水、執務室や廊下の天井ボード、壁パネルの脱落、防火扉丁番の破損などがありました。

【注2】
揺れの周期が長い(約2~20秒)波を多く含む地震動で、ゆっくりとした揺れが長く続く特色がある。超高層建築物等では共振により構造安全性などへの影響が指摘されている。「共振」とは、構造物がもつ特定の周期に対して強く反応し、振動が増幅する性質のこと

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東日本大震災時、第一本庁舎ロビーに集まる都民

エレベーターは地震管制装置の作動によって最寄り階へ停止したため、利用者の閉じ込めはなかったものの、一時的に都庁舎内の75基が運行を停止。その後も大きな余震が断続的に発生したため、すぐに点検作業ができず、運転再開までに約6時間かかりました。一部のエレベーターではロープの絡まりやもつれなどにより、復旧作業に更に時間を要しました。

震災後の電力のひっ迫に対応

震災後は電力供給がひっ迫したことを憶えている方も多いと思います。東京電力福島第一・第二原子力発電所の約900万キロワット分の電力が失われ、多摩全域・23区の一部で計画停電が実施されました。
新宿などの都心エリアでは計画停電の実施は回避されたものの、電気事業者からのみの電力供給に依存することのリスクが明らかになりました。
このため都庁舎では電気事業者からの電力供給以外に、近隣の新宿地域冷暖房センターからガスタービンによる3,000キロワットの電力供給を受けることにしました。平成24年より都庁舎の受変電設備改修工事 に着手し同年12月から受電を開始しています。

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■長周期地震動対策

長周期地震動は超高層建築物等へ影響を与えると指摘されています。都庁舎への影響を把握するために「耐震安全性調査委員会」を設置し、東海・東南海地震等を想定しました。
その結果、長時間の繰り返しの揺れにより一部の構造部材で損傷が生じる階が発生することなどが明らかになりました。
このため改修工事では制振装置を設置するとともに、建物の変形を小さくして大きな揺れを早く収める長周期地震動対策を施すことになりました。

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今回の改修工事の大きな目的の一つが耐震工事。写真は制振装置の構造体

■設備更新の機会に併せ制振装置を新設
各フロアの設備更新の機会に併せ、制振装置(オイルダンパー)を第一本 庁舎94か所、第二本庁舎61か所に設置し長周期地震動対策のための工事を行いました。

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オイルダンパーを搬入 

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地震の揺れをオイルダンパーで吸収する建物を守る要の装備。
防災意識を高めるために見える化

都庁舎が長周期地震動対策を先駆的に行うことは、他の超高層建築物に対して対策の普及を啓発することになります。そのため一部の施工箇所では、制振装置の仕組みや機能が「見える」ように工夫しました。

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引き渡し前の執務室

■天井と壁の「クリアランス」?
大震災が起きたときの帰宅困難者受入れスペースは、低層階のエントランスホールなどを活用するため、天井などの脱落防止に万全を期す必要があります。
天井は、上階の床などに吊り下げられているものですが、地震時にその天井(仕上げ材など)材と建物の揺れの違いでぶつかり合い天井材が壊れて落下する恐れがあります。これを防ぐために施されるものが「クリアランス」です。

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壁面とのクリアランスを確保

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クリアランス部の断面図

■エレベーターの耐震性・安全性向上
地震対策として主ロープの絡まり防止装置を強化し、特に長周期地震動対策については、感知センサーを増設、管制運転を細かく行うなど、運行安全性の確保と運行停止時の早期復旧を目指します。また駆動装置及や制御器に故障が生じ、かごの停止位置が大きく移動した場合や、かご・昇降路の全ての出入口の戸が閉じる前にかごが上昇した場合、自動的にかごを制止する戸開走行保護装置を設置しました。


■スプリンクラー配管のフレキシブル化
地震時に、スプリンクラーヘッドまでつないでいる給水配管のつなぎ目部分などが折れる、曲がるなどの破損を防止するため、スプリンクラー配管にフレキシブル継手という、くねくねと曲がる金属性の配管をつなぎました。

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スプリンクラー配管のフレキシブル化

省エネ・節電の徹底による都庁舎のCO2排出量削減

■省エネ型の空調設備の導入
都庁舎のCO2排出量の約6割が空調関係で占められています。開庁した平成3年当時と比べ省エネ技術は格段に進んでいることから、省エネ型の空調設備である大温度差空調システムを導入していくことになりました。
大温度差空調システムとは、搬送する水の量や空気の風量を低減させ、搬送設備のエネルギー消費量の削減と光熱水費の削減を図ります。
都庁舎では空調設備に利用する水や送風の往きと還りの温度差を、現状 (水:7℃差、送風:10℃差) に比べて大きくする (水:10℃差、送風: 14℃差)ことにより、送水・送風量の約3割の低減が期待できます。

執務室など移転の工夫


工事期間中の執務室などは、都民や来庁者への影響をできる限り抑えるため、庁舎内で順番に閉鎖・移転をする、いわゆる「玉突き移転」を行いました。防災センターのような防災拠点として重要な機能など、移転が困難なスペース は、工事中も機能を維持する必要があるため居ながらの工事となりました。

総事業費はいくら?

都庁舎改修プロジェクトに係る事業費は、当初約722億円の見込みでしたが、長周期地震動対策の制振装置の設置費用約40億円を加えると、約762億円の総事業費となる見込みです。

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H25.2月「都庁舎改修プロジェクトの取組について」より抜粋

写真で見る「工夫・苦労がありました」

来庁者や職員がいるなかの工事では様々な苦労がありました。また機械だけでは対応できず人力で行うことや工夫を凝らした施工も多々ありました。それらを写真で一挙ご紹介します。

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居ながらのため天井の解体は音の大きな工具は最小限の使用にとどめた

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防音養生シートを張り、騒音防止につとめた

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来庁者の多いこの通路は夜間を中心に工事。夜を徹しての地道な作業が続いた

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膨大な情報量を維持する都庁の頭脳・サーバールーム床の免震化。揺れが起こった時鉄板の上をスライドする仕組み

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上記サーバールームの免震用ダンパー(手前)とバネが伸びて地震の揺れに対処する

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二庁3階の吹き抜け部。3,4階つなぐエスカレーター2基を撤去し新しく階段を設置した。
来庁者への安全面の配慮と重量物解体時の振動・騒音を考慮して夜間限定の作業に。写真はエスカレーターの踏み段や駆動チェーンの撤去。人の手で運べる重さに切り離した

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上記エスカレーター最重量・駆動部分のドライブシャフトを外したところ

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エスカレーターを外したあと、3階と4階をつなぐ新しい階段の設置が始まる

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中で使う生コンクリートは外で品質検査をしたあと、人海戦術で運ぶ。固まらないように時間との勝負

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上記のコンクリートを4階までは貨物用エレベーターで、そのあとは一つ一つ機械室へ上げる。ペール缶一つ23キログラムを100個

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間仕切りやシャッターの解体

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既存の照明を一つひとつ丁寧に解体し、耐震化、LED照明による省エネ化、明るさセンサーによる調光制御導入で節電を図った

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通常の工事では屋外で行うことの多い解体後の部材分別作業も屋内で丁寧に

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スプリンクラー制御弁の交換。横配管の工事は部屋を閉鎖すれば可能だが、立配管の場合は上下の部屋が閉鎖されているとは限らない。また上下を結ぶ立配管は常に水が満ちている。そこで液体窒素による凍結工法を採用。水を凍らせて固化させ交換する

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電力を送るための盤も開口部に合わせたギリギリのサイズで製作し、搬入は台車などで工夫し扉の上枠をかわしながら慎重に行った

このように私たちの見えないところでいろいろな人が動いて改修工事を行っているんですね。工事の全工程が終了するのは4年後です。
災害に強く、安心して使うことができる都庁舎。こうご期待ください。

財務局 都庁舎改修プロジェクトの取組について


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