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馬も願うよ。交通事故ゼロ

広報広聴課です。
時々都内やテレビなどで、ビシッとしたかっこいい制服に身を包み、馬に乗ってパレードを先導している人たちを見たことがありませんか。

彼らは実は警察官。警視庁の第二交通機動隊に所属する騎馬隊員なのです。
余談なのですが警視庁は東京都の機関、警察庁は国の機関。日ごろお世話になっている都内の交番のお巡りさんは警視庁の職員です。この二つ、結構混同してしまう人多いみたいです。。


ドイツ視察を参考に

騎馬隊の歴史は古く、明治7年、警視庁と内務省との間の文書往復や伝令を行っていたのが始まりです。
その後、明治政府の欧州視察時、ドイツに騎馬警察が設けられ皇族の警護や雑踏整理に大変よい成果を収めているのを見ました。これを参考に明治36年9月、警察官15名・馬15頭の警視庁騎馬隊が発足したのです。

様々なパレードで活躍


昭和27年の皇太子殿下御成人式や昭和34年の皇太子殿下御成婚の儀でのパレード、昭和61年のイギリス皇太子殿下同妃殿下来日パレードで馬車列警護を行いました。
また昭和39年の東京オリンピックや昭和47年のジャイアントパンダ来日の際には雑踏警備【注】も行いました。
【注】多くの人々が集中することによる群集事故や雑踏事故を防ぐための警備

どんなお仕事を?

現在の騎馬隊員の構成は警察官17名、警察行政職員5名、計22名です。
活動に従事する馬は16頭。競走馬で活躍していた馬たちも多いのだとか。馬たちは府中市にある東京競馬場(JRA施設)内にある騎馬隊舎で生活し、日々訓練を受けています。
騎馬隊の主な仕事に交通安全教育があります。隊員は小学校や幼稚園などで馬と一緒に交通ルールを子どもたちに説明しています。また交通安全や防犯の各種パレード参加や近隣の小学校通学路の学童交通整理などもしています。

国事である各国大使の信任状捧呈式【注】の警護もあります。
【注】天皇陛下に信任状を捧呈する儀式
昭和27年の講和条約の発行以降、諸外国の大公使の参内は原則馬車列によって行われることとなりました。要請があったときは馬車列警護を行っています。

馬たちとご対面~

今回は騎馬隊の訓練や馬たちの様子を見に、東京競馬場に行ってきました。

16頭は全員オス。それぞれ個性があります。おとなしい子もいればやんちゃな子も。わたしたちが取材に行くと「何しにきたの?」と興味深々。

子どもたちを乗せることもあるので、穏やかな性格の子が多いのです。初対面でもナデナデさせてくれました。

小隊長と仲良し「銀河」

騎馬隊員の任期は5年。5年経つと異動となり、階級が変わればまた5年従事が可能です。
小隊長の鳥羽博征さんは元はオリンピック競技の近代五種競技選手で馬の障害飛越をしていました。騎馬隊から声がかかり、巡査時代に5年間入隊。その後警察署で13年勤務。警部補に昇任後、また入隊を志願し現在小隊長を務めています。

鳥羽さんの担当馬は「銀河」。いま11歳で人間だと44歳くらいです。馬は30歳くらいが寿命だそう。
銀河はおとなしいのですが、鳥羽さんのことが大好きな様子。インタビュー中もしょっちゅう鳥羽さんに「こっちを見て」アピール頻発でした。
お互い信頼しあっている様子が写真の表情からもわかります。

若手巡査長と新人?(馬)スノーマン

もう一組ご紹介。山田龍祐巡査長と相方のスノーマンです。
「スノーマン」はまだ競走馬のときの名前。
来たばかりなのでこれから隊での名前が付けられます。年齢は10歳。こちらもおとなしい子です。

山田さんは学生時代、馬術部に所属。大好きな馬で交通安全教育活動を行い交通事故ゼロに貢献したい、と騎馬隊を志望しました。
馬の調教などで苦労している点は?と聞くと
「騎馬隊に来る馬は元競走馬です。引退後乗馬クラブなどにいた馬などで、人前に出ることや触られたりじっと止まっていることは苦手です。交通安全活動には適していません。子どもたちが顔を撫でても嫌がらず、人に馴染み、優しく接することができ、車にも怯えずパレードに参加でき、交差点に立てる馬にするなど、調教には大きな労力を要します。
またコロナ渦の影響でイベントが減り、活動にブランクができてしまいました。馬に活動を思い出させ、再開することには苦労しました。隊員同士で協力し合い、様々な訓練を行って無事に乗り越えました」とのことでした。

さあ、訓練ですよ

外での活動が多いため音で驚かないように、防音の生地で作ったサウンドレスのイヤーネットを着けます。これから馬場の訓練なので山田さんに着けてもらっています。

食事は一日三回。朝の5時、昼の10時半、15時半に早いですが晩御飯。20時に夜食?として干し草をあげます。

訓練は毎日。砂を敷いた馬場や草の上で1時間程度行います。歩いたり走ったり、止まったりを繰り返します。

馬は臆病な性格です。騎馬活動に適した馬にするためには我慢を覚えさせる訓練が必要です。でも一つ間違えれば馬のトラウマにもなりかねない。訓練には細心の注意を払っています。

お手入れは大事な仕事

終わったら厩舎に戻りお手入れ。水を飲んだり、シャワーで足を洗ったり、汗をながしたり。お手入れはとても大事なことです。汗をかいたままだと皮膚病などの原因になります。

「汗をふいてね!」

「ブラッシングもちゃんとしてね!」

蹄(つめ)の部分についた泥などを洗っています。
蹄(つめ)は馬の命。馬の蹄は人間でいうところの中指に当たります。指で立っているようなものなのです。割れると大変なので「蹄油(ていゆ)」というマニキュアのような油を塗り、蹄の保護をします。

「馬は人間の気持ちがよく分かります。心を込めて接すればその分だけ応えてくれます。少しでも子どもたちの心に残る騎馬活動ができるように、と願いつつ世話をしています。馬の生涯は騎馬隊で終わるわけではありません。どこに行っても可愛いがられる素直な性格でいられるように、と心がけて接しています」と山田さん。

「馬と一緒の交通安全教育は子どもたちの記憶にも残るはずです。おまわりさんが馬に『信号をよく見て』と言っていたから自分たちも信号をよく見るようにしよう、と子どもたちが思い出してくれ、交通事故が1件でも減ればと思います」と鳥羽さん。

「騎馬隊の馬たちも、交通事故がなくなることを願っています!」と声を合わせたところをパチリ。
お茶目な騎馬隊の馬たちとステキなみなさんでした=



 

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