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交通局だけど電気つくってます

水力発電は発電する際に二酸化炭素(CO2)を排出せず、水の循環サイクルによって再生できる環境にやさしいエネルギーです。その水力発電を交通局が行っているのをご存じですか?
交通局といえば、都営地下鉄、都バスなど交通事業者のイメージですが、電車に電気は必須。使うなら作ろう、と昭和32年から多摩川の流水を利用した水力発電の電気事業を行っているのです。

現在、交通局が管理している水力発電所は、多摩川第一発電所と白丸発電所(西多摩郡奥多摩町)、多摩川第三発電所(青梅市)の3か所。
これらの発電所の最大出力は合計36,500キロワットで、1年間に発電する電力量は、だいたい一般家庭35,000世帯の使用量に相当します。令和3年度は事業者に決定したENEOS株式会社を通じて、都内のRE100宣言企業や都営バス全営業所へ向けて販売しています。

施設を紹介します

多摩川第一発電所
多摩川第一発電所は、東京都西多摩郡奥多摩町にある発電所です。
小河内ダムの堤体に隣接しており、小河内貯水池に貯えられた水を利用して、発電を行っています。
ここで作られた電気は、交通局の送電線を経由して、約6キロメートル下流にある東京電力グループの変電所へ送られています。

多摩川第一

多摩川第一発電所

発電所概要

第一発電機

多摩川第一発電所の発電機

白丸調整池・白丸調整池ダム

白丸調整池ダムは、東京都西多摩郡奥多摩町にあるダムです。多摩川第三発電所を建設する際に多摩川の水をせき止め、下流にある多摩川第三発電所に発電用の水を送るために造られました。また、このダムによってせき止められた調整池が白丸調整池です。

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白丸調整池

概要白丸

ダムからの放流

ダムからの放流

白丸発電所

白丸発電所は白丸調整池ダムに併設された発電所です。
平成12年までは、白丸調整池から多摩川第三発電所までの、多摩川の河川機能維持と観光のために、一定水量を白丸調整池ダムのゲートから放流していました。この放流水を有効活用するため建設されたのが白丸発電所。周辺の環境に配慮して、その大部分が地下に設置されています。

白丸発電所

白丸発電所イメージ

白丸発電所概要


白丸発電所 水車

白丸発電所の水車・発電機

多摩川第三発電所
多摩川第三発電所は、東京都青梅市にある発電所です。
白丸調整池から導水路を通じて送られた水を利用して発電を行っています。

第三発電概要

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多摩川第三発電所の主要変圧器

交通局の電気事業の歴史

歴史

水力発電のしくみ

水力発電は、高い所から低い所へ流れる時のエネルギーを利用して、発電を行います。高いところから低いほうへ勢いよく水を流し、落ちる高速・高圧の水流で水車を回し、発電します。
(1)ダム湖の水を取水口から取り入れる。
(2)水は水圧鉄管により水車へ送り込まれる。
(3)水量と落差(高低差)が持つエネルギーで水車を回転させる。
(4)水車に直結した発電機を回転させて発電する。
(5)発電した電気は変電設備、送電線を経て電力会社へ送られる。

電気の仕組み

水力発電の種類

流れ込み式(自流式)水力発電 
河川や農業用水路などに発電用水車を設置します。水を貯めることができないため、豊水期には全ての水を利用することができず、反対に渇水期には発電量が少なくなりますが、比較的建設コストが抑えられるというメリットもあります。

調整池式(多摩川第三発電所、白丸発電所)
河川の流量を調整池で調整して発電。短期的な発電量調整に活用しています。1日分~1週間分程度の発電用水を調整池に溜め発電量を調整することができます。天候の変化や電力需要の変化に対応でき、流れ込み式水力発電所よりも効率的な発電が可能です。

貯水池方式(多摩川第一発電所)
河川の水流をダムでせき止め、ダムに溜まった水を利用します。河川の水を完全にせき止めるため、水の流れを自在にコントロールできます。四季のある日本でも年間を通じて安定した発電が可能。放水路から流される水は河川に戻され、最終的に海に注がれます。
ただし、流れ込み式水力発電所と同様に、河川が短い日本では建設する場所が少なくまた、ダム建設による周辺地域の水没や環境変化など、多くの住民の協力なしに建設することができません。

揚水式 
1日の電力消費量は時間帯により大きく異なり、ピーク時には最も少ない時の約2倍にも達します。揚水式は、これらピーク時に対応する発電方式で、主に地下に造られる発電所とその上部、下部に位置する2つの池から構成されます。昼間のピーク時には上池に貯められた水を下池に落として発電を行い、下池に貯まった水は電力消費の少ない夜間に上池にくみ揚げられ、再び昼間の発電に備えます。このように揚水式は、池の水を揚げ下げして繰り返し使用する発電方式です。

安全面への取組

台風時などの対応
交通局では、台風で大雨が降った場合など白丸調整池ダムの水位の急増に対応すべく、ダムのゲートから放流を行うことがあります。その際には、必要に応じてサイレンやスピーカーによる警報や、巡回による注意喚起を実施しています。
また、ダム下流の河川流量が急増しないように放流量の調整を行うなど、河川の安全を考慮した水運用を行っています。

自然災害への対応
平成26年2月の記録的な大雪の影響により多摩川第一発電所が孤立するトラブルがありました。その教訓を踏まえ、隣接する小河内ダムの水道局職員との合同相互研修や非常時に備えた合同演習を行い、あわせて非常用発電機の燃料タンク容量を倍増し、発電所の安全管理体制の強化を図っています。

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多摩川第三発電所の積雪状況(平成26年2月)

また、一般開放している白丸調整池の巡視路では、東日本大震災の際に落石が発生し、一時通行止めとしていました。平成26年度から29年度にかけて落石対策工事を実施し、現在は通行を再開しています。

フェンス

白丸調整池ダム落石対策工事で設置した落石防護フェンス

多摩川第一発電所運転開始60周年

昭和32年12月22日、多摩川第一発電所の運転開始により交通局の水力発電事業は始まりました。小河内ダム直下の狭隘な場所に建設された多摩川第一発電所は、様々な技術を駆使して築かれました。そんな貴重な建設当時の写真を一部ご紹介します。

建設中の多摩川第一発電所(昭和32年)

建設中の多摩川第一発電所(昭和32年)

建設中の水圧鉄管(昭和31年)

建設中の水圧鉄管(昭和31年)

建設中の吸出管(昭和32年)

建設中の吸出管(昭和32年)

工場で仮組み中の水車(昭和32年)

工場で仮組み中の水車(昭和32年)

水車の据付(昭和32年)

水車の据付(昭和32年)

組み立て中の発電機固定子(昭和32年)

組み立て中の発電機固定子(昭和32年)

組み立て中の変圧器(昭和32年)

組み立て中の変圧器(昭和32年)

多摩川第一発電所運転開始の瞬間(昭和32年)

多摩川第一発電所運転開始の瞬間(昭和32年)

配電盤 運転開始時に設置されたもので現在も稼働中

運転開始時に設置された配電盤は現在も稼働中

交通局の水力発電事業、いかがでしたか?

意外に長い歴史のある交通局の水力発電事業なのでした。

東京都交通局 電気事業

<参考資料>

経済産業省 資源エネルギー庁ホームページ




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