一度は行きたい、観てみたい文化財ウィーク
戦略広報課です。
芸術の秋とはよく言いますが、それにしてもなんで芸術は秋なんでしょうね。文化の日があるからですかね??
諸説ありますので、その辺はおいておき。
さてこの秋、東京文化財ウィーク2023期間中に都内各所へ行ってきました。東京の文化財を広くみなさんに知ってもらおうと、普段公開していないものを含めて観覧できる企画なのです。
いやあ、それにしてもたくさんの文化財がありまして、今回はその中のほんの一部に行ってきました。
王子にこんな建物が・・旧醸造試験所第一工場
まずはこちら。
王子駅からテクテク歩いて赤レンガのレトロな建物が見えてきました。ここは旧醸造試験所第一工場。通称・赤煉瓦酒造工場。かつては清酒の研究や試験を行う酒造工場でした。1904年にドイツのビール工場を手本に設計された、明治期の貴重な煉瓦造り建造物です。また日本の清酒品質・醸造技術向上のために、1905年から酒類醸造講習がここで開かれました。
ちなみに工場の赤煉瓦は渋沢栄一らが興した日本煉瓦製造(株)の上敷面工場(埼玉県深谷市)で焼かれたものです。
原料処理室。ここで米を洗い水につけ吸水させ、その後、水切りして蒸します。蒸米をつくるまでの場所です。文化財ウィークなので中を説明してくれるツアーがありました。区の学芸員の方や近隣にお住まいの方などが参加。みなさん、熱心にメモを取って聞いていました。
麴を製造する旧麹室。施釉白煉瓦(せゆうしろれんが)でできています。施釉とは焼き物にうわぐすりをかけて色ツヤなどを出すことです。日本銀行本店(明治29年竣工)の地下大金庫室の壁も施釉白煉瓦です。
工場内の廊下も赤レンガです。レンガの短辺と長辺を並べた層が交互に積まれる「イギリス積」。天井が2階の床と一体となった「耐火床」という構造です。
昔の発酵室(仕込み室)です。蒸米、麹、仕込み水を混ぜて、醪(もろみ)としてこのタンクに入れます。約1か月で発酵の終わった醪(もろみ)は別の部屋で搾り、清酒と酒粕にわけました。
渋谷にある「群書類従」とは何なのか?
さて場所を移動して次は渋谷です。
閑静な住宅地にある温故学会会館を訪ねました。ここには「群書類従」の版木が通年で公開されています。
「版木って?」という方も多いと思うので、版木から説明します。
今のような印刷技術がない時代は、木に文字や絵を彫り、そこに墨を入れて紙に摺る(する)という方法をとっていました。これを木版印刷と呼びます。浮世絵なんかがそれですね。その木版の元になるものが版木です。
そして「群書類従」は江戸初期までの文化、日本史、国文学などの文献を収載した重要な資料集。江戸時代に活躍した盲目の学者・塙保己一(はなわほきいち)が編纂した膨大な資料です。
保己一は目が見えませんが、ずば抜けた記憶力の持ち主。各地を訪ねて調査した資料をお弟子さんたちに筆写させ、それらを記憶しながら吟味や校訂を続け、版木に彫っては木版本にしていきました。神社・仏閣・公家・大名の元などを訪ねて調査をしましたが「他見を許さず」と見せてくれなかったりする場合もあり、大変苦労したようです。
そうして出来上がった「群書類従」は全部で666冊。版木枚数は17224枚。両面あるので約34000ページ分。昭和32年には国の重要文化財に指定されました。
今も多くの研究者に利用されています。保己一先生すごいです!
女子大の中にある「めぐみ荘」
最後は調布にある白百合女子大に向かいました。目的地は大学の中にある「めぐみ荘」。
木々が多く美しい白百合女子大学の中。まるで庭園ではありませんか。
いま大学の建っている土地は、もともと植物のムラサキソウの産地で、津村順天堂(現・株式会社ツムラ)創始者の津村重舎氏が薬用植物園を経営していた場所です。
そこに移築されたのが「めぐみ荘」。
元は静岡県田方郡で代々庄屋を務めた資産家・菊池家の住居です。
津村氏がこれを譲り受け、当時の薬草植物園内にトラック40数台で全材料を運びこみ、原型を保つようにして復元されました。
めぐみ荘は、茶道を趣味とした津村氏による茶会開催や宮家の植物園視察の際の休憩所、また第二次世界大戦中には首脳部の秘密会議場ともなりました。現在では大学のクラブ活動などに使用されています。
いかがでしたでしょうか。少しだけではありますが、我ながら、なかなかレアな文化財を選ぶことができたのではと思います。(`・∀・´)エッヘン!!
東京にはまだまだたくさんの文化財があります。
通年公開しているものもあるので、ホームページをぜひチェックしてみてくださいまし。
今回紹介した施設のご案内
旧醸造試験所第一工場:団体の観覧を通年行っています。(ただし有料)
塙保己一史料館(温故学会):こちらも通年公開(ただし有料)
めぐみ荘:こちらは通常非公開。来年の文化財ウィークをお楽しみに。
東京文化財ウィーク2023
子ども向けの文化財ウィークホームページ