農業が好き。好きなことができるって幸せなこと 第二回 町田編
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農業が好き。好きなことができるって幸せなこと 第二回 町田編

東京都庁

広報課です。
前回に引き続き、東京で新規就農した方を訪ねました。
3番目に登場していただくのは町田市の佐藤嗣高さんです。


キッチンカーがコロナで打撃

農業系の出版社に3年間勤務していた佐藤さんは営業で全国の農家約3,000人を訪ねたといいます。農家を廻っている中で、自分が生まれ育った東京で農家をやってみたいと思うようになりました。
佐藤さんが「心の師匠」と呼んでいる、大分県の農家さんのところで修行。その後町田で1年研修。焼き芋をキッチンカーで販売したり、八百屋で配達しながら生計をたてていました。そこへコロナ禍。

焼き芋

お客さんが楽しみにしていた焼き芋

「キッチンカーはお祭りなどでの大きな収入源でした。コロナでお祭りがなくなり東京ではもう無理かも、大分に行こうかなと考えていたころ、農地バンクに応募したら土地を借りることができたのです」

10品目野菜セットが好評

野菜セット

佐藤さんの野菜詰め合わせセット

いま町田で専業農家として2年目。50アールの畑を借りて「旬の野菜10品目詰め合わせセット・2000円」を販売しています。毎週、隔週、月1とコースがあり、初めは口コミで。SNSやチラシで広がり固定客が増えました。鮮度がいいし美味しいと評判です。「営業は得意なんです」と佐藤さん。大変なところは?と聞くと「段取りが難しい・・」
「例えば、痩せている土地なのでもっと早くたい肥を入れたかったのに、収穫後の芋のツルが片付いてなくて出来なかったり。スピードがあと10分早ければほかの作業ができるのにな、とか。研修とは違いますね。細かいところが自分でやるとぜんぜん違う」

東京でやると決めたからには

野菜セットは「常に切らさない」ことがテーマ。1月販売用の野菜、2月用、と先を見越して多品目を育てる必要がありますが、佐藤さんの畑は一つ一つ小さい面積で、しかも6か所に点在しています。「大分なら一枚のまとまった畑がここの10倍の広さで借りられます。でも東京でやると決めた以上、ここでやる工夫をしようと」

いもづる

収穫後のサツマイモのつる。ヤギを飼っている近くの学校にあげたり。地元ならではのつながりがあって面白いとのこと

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緑肥として土壌改良のため作物の間に麦を植えている

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畑に隣接する竹藪。景観としてはきれいだが畑に侵入してくるので大敵

ここで疑問が浮かびます。
佐藤さんはなぜ東京にこだわるのだろう。地方の広い場所を借りれば収益も上がるし、耕作もやりやすいのでは?

東京の農家には自由がある

「経営を考えれば地方の大きな農地でやったほうがいいでしょう。でも小さいころから、自分の出身地である世田谷の農地がどんどん減っていくのを見て悲しかったのです。
東京で農家が農業をやっている大事さがあると思うんです。農家がそこで生活している姿を失くしたくない。景色や癒しの場として残すだけでなく、その地で生活している姿を残したいと。東京の農家は会社勤めなどと違い、東京に数少ない自由な存在と場所だと思います。その自由さを失くしたくないです」

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「ぼくはもともと「農家」が好き。いま地方の農業は衰退しているし作物は単価も安い。作物の価値を高くしたいし農家や農業の価値も体験して知ってほしい。ここなら近くに友達もいてその子どもたちも来ることができます。限界集落に入って農業をやるのも意義があることだと思いますが、東京で生まれ育ったから、ここで、自分のできる範囲で農業の活性化に貢献していくことにも意義があると思っています」

就農したいけれど

東京で新規就農したいという人はどこへ相談したらいいのでしょう。窓口の一つ、一般社団法人東京都農業会議(以下、農業会議)の松澤龍人事務局次長兼業務部長に最新の動向を伺いました。

松澤さん

農業会議 松澤さん

農業会議では新規就農希望者の相談、研修や農地、雇用の紹介などを行っています。最近新規就農希望者がとても多いそうです。ただし希望しても農地が少ないのが東京の悩みです。

まず農地がない

一般的に東京で農地を借りることができるのは、市街化区域以外と前述した大原さんのように市街化区域内の生産緑地です。しかし生産緑地の場合、不安定な材料があります。
所有者に相続が発生した場合、その相続人が相続税納付などのために農地以外に転用せざるを得ず、農地を返還しなくてはならない状況に陥りやすいということがあります。
青梅市やあきる野市など多摩地域に多い市街化調整区域では、必要最小限の開発以外に農地を転用できません。では新規就農は市街化調整区域でやればいいのでは?と思っても、それも簡単ではないのです。
農地は所有者の財産でもあり、また先祖から受け継いできた畑です。きちんと耕作し維持してほしい、信頼できる人に貸したいと思うのが当たり前です。
「ですからなるべく研修は自分が就農したい場所で行い、その土地の人と信頼関係を作っていくことを勧めているんです」と松澤さん。

マルシェ野菜

さらに迫る「2022年問題」

生産緑地は原則30年間農地として維持することが義務づけられ住宅などを建築することはできません。最初(1992年)に指定を受けた(都内の8割以上を占める)生産緑地は、2022年に30年を迎えます。特定生産緑地の手続きを行わない生産緑地は、固定資産税の軽減措置の対象外となり、売却を検討する人が増え、これまで以上に農地減少が懸念されてきました。
「この問題の対応として、農業会議は特定生産緑地指定に向けての活動を進めてきました(「特定生産緑地制度」【注】)。農家の方々も『せっかくこれまで残してきたのだから手放さずに残していこうかな』と言ってくださる方もいます。今後、自分では耕作できないけれど、やりたい人がいれば貸してみようかという人も出てくるのではと思います」
【注】
2017年の生産緑地法改正で、生産緑地指定後30年を経過しても、税制の特例措置を10年継続できる制度

待つことも視野に

「紹介できる農地が少ないので、研修をしつつ農地がみつかるまで待ってくださいと新規就農希望者にはお願いしています。すぐに農業をやりたい、と意欲があっても難しいのです。野菜は単価も安く、すぐに多額の利益が出る、といったケースはまずありません。年数をかけて徐々に軌道に乗せていく仕事です。今すぐではなく、子どもさんが巣立って落ち着いてからではどうですか、というアドバイスもしています」

マルシェ

農業会議を通じて生まれた都内の新規就農を応援する集まり「東京NEO-FARMERS!」によるマルシェの様子。直売を行うマルシェは定期的に開催している

東京の新規就農に向いている人

「引っ越しなどの移動がすぐにできるなど、生活に柔軟性がある人。長期的な視点や展望を持って前に進める(生活ができる)人などでしょうか」
東京で就農するには時間がかかることもあります。それでも第一次産業の成り手を作ることは大いに意義があります。

川清掃

「東京NEO-FARMERS!」では年に1回・青梅市の水田保全活動として堰普請(水入れ式)に参加している。写真は川の清掃の様子

東京だからできること

「他県のある市ではイチゴやトマトなどの特産品があり、新規就農者を多く募っています。そういった場所ではまず融資を受けてビニールハウスなどを建てます。販売は農協などが担い、軌道に乗りやすいといえます。
一方、東京は多品目栽培のため、開始当初に融資等は受けず、直売所などで地道に販売し、だんだん規模を大きくしていくという感じでしょうか」
ともかく、みなさんに共通しているのは「農業が好き」ということ、と松澤さんは言います。
「一生好きな仕事ができるって考えてみると幸せなことなんだろうなと思います」

東京の農業に携わっている人たちの話を聞き、わたしたちの食料を支えてくれる姿を見て頼もしい気持ちになりました。就農を希望する方が、いろいろなハードルを越えて農業を続けていけるよう、これからも応援していきたいです。

産業労働局 とうきょう就農支援情報
一般社団法人東京都農業会議
東京の就農を応援している「東京NEO-FARMERS!」

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