全盲の陸上選手・高田千明さんと小学3年生たち
子どもたちに障害者スポーツへの興味や関心を持ってもらいたい、障害を持つ人への理解を深めてほしいという思いから始まった『オリンピック・パラリンピック教育推進事業「夢・未来プロジェクト」』の一つである「自分にチャレンジ」プログラムが10月28日、江東区立第五砂町小学校で開かれました。
パラリンピック陸上競技アスリート登場
千明さんは先天性の弱視で陸上選手として健常者の大会にも出場してきましたが、高校3年生のとき全盲になりました。21歳から視覚障害者陸上競技を本格的に始め、リオパラリンピックで8位入賞。世界パラ陸上ロンドン大会では日本新で銀メダルを獲得。今年の東京2020大会ではパラ陸上の走り幅跳びで自身の記録を更新し5位に入賞しました。
【注】高田さんの「高」は本来「はしごだか」
千明さんと裕士さん走る!
3年生が集まった体育館に、千明さんとデフリンピック陸上競技選手で夫の高田裕士さんが一緒に登場しました。
千明さん(左)と裕士さん
デフリンピックとは四年に一度開催される聴覚障害者のオリンピック
裕士さんはこの日、千明さんの伴走者を務めてくれました。千明さんは全盲ですが走る姿からは「見えない」と全く感じさせない走りっぷりです。裕士さんと一緒にスピードを上げて走ると、子どもたちからは「おおーっ」と驚きの声が上がりました。
3年生もやってみた
そのあと実際に子どもたちがアイマスクをつけ、伴走の子にロープで誘導されながら視覚障害の体験をしました。
「見えないのでちょっと怖かった」といった感想や千明さんに対し「見えないのに走るのは怖くないんですか」「どうやって幅跳びの踏み込む場所がわかるんですか」といった質問がたくさん出ました。
アイマスクをつける人、誘導する人に分かれて体験
質問タイム。みんな積極的
千明さんにインタビュー
今日の感想を教えてください
パラリンピックが終わって初めての講演会でした。コロナ禍ですが久しぶりに子どもたちと接することができました。わたしの話もよく聞き、体験もしっかりやってくれ、競技への興味も本当に持ってくれているのがわかり、とても楽しくやらせてもらいました。
パラリンピック終わってみていかがですか
延期となり、無観客となり、家族も見ることができなかったのでとても残念でした。でもたくさんの人が協力してくれた温かい大会でした。5位入賞はしましたが幅跳びで5メートル飛んでメダルを獲りたかったです。調整はうまくいってたので残念でした。次の世界パラ陸上、パラリンピックを目指してステップアップしていきたいです。
1年延期となった間、どんな風に過ごしていたのでしょうか
緊急事態宣言が出て練習していた場所が閉鎖され、走ったり跳んだりできませんでした。1年間延期で練習時間が増えても場所がない。公園も途中で使えなくなってしまいました。歩道を使ったり家の中でできるトレーニングをしたり、とにかくできることを探しました。
高田さんは以前からこのプログラムに派遣アスリートとして参加されていますが、パラリンピックが終わり、参加の仕方や子供たちとの向き合い方に変化はありますか
自分が選手のうちにたくさん呼んでほしいです。障害を持っている人に対して関心の高い今、たくさん話し、接したいですね。障害を持っている人、持っていない人が垣根を越えてお互いがいるのが当り前、障害者スポーツがあるのが当り前と思ってもらえるよう、できるだけ多くのところに参加したいと強く思っています。
千明さんのメダルを見せてもらう子どもたち
競技以外で今後やっていきたいことはありますか
わたしのあとに続く選手が育っていないので、育てるためのサポートをしたいです。また伴走者が少なく競技できない選手もいます。そうしたサポートしてくれる人を増やすための活動もしたいと考えています。
他には、いま聖徳大学の教師を育成する学部の客員教授として招かれています。すべての人がいて当たり前なんだという社会になっていけるよう、これから先生になる人たちと、たくさん話をしていけるといいなと思っています。
夢・未来プロジェクト