毒にも薬にもなる植物
戦略広報課です。
私事ですが、植物には薬用という点で大変お世話になっています。例えば初夏に白い花をつけて咲いているドクダミ。
蚊に刺されたときは、あのハート形の葉っぱをもんで、汁をつけるとわたしは痒みが収まります。またアロエは火傷などのときに使っています。(うちのおばあちゃんに教えてもらいました)
植物は医療の現場で使われる薬の中にも使用されています。
小平市にある東京都薬用植物園では薬用植物、有毒植物など750種類以上を集め栽培しています。研究員の中村耕さんに園を案内していただきました。
毒があるから気をつけて
まずは似ているけど食べると毒だよ、という植物をご紹介。
トウシキミとシキミ
「タミフルって薬がありますよね」と中村さん。
あのインフルエンザのお薬ですよね?
「そうです。そのタミフルの製造原料がこちら、トウシキミ。中華料理などによく使われる別名『八角』です」
ああ、八角!わたしの好きな台湾料理によく入ってます。ルーローハンとかに。
「そうそう。それです。トウシキミは香辛料ですが、これによく似ている『シキミ』は毒なのです。
食べてしまうと、おう吐、意識障害、けいれん、重症の場合は死に至ります」
あわわ、それは大変。でもトウシキミとシキミ激似じゃないですか??
見分けるポイント
「トウシキミは甘く強い香り。シキミは仏事に使われる抹香の香りがします。またよく見るとシキミの果実の先端は鋭くとがっています」
確かに。シキミのほうが悪者風。トウシキミのほうが先端がマイルドですね。
「落ちていたシキミの実を松の実と間違えて食べてしまった例がありました。果実は猛毒なので注意してください。よくお寺や墓地に植えられています」
トウシキミは日本では稀にしか見られません。東京周辺の野外ではほぼ植えられていません。なので、見かけるものは毒のある「シキミ」と思っていたほうがよいかもしれません。
ニラとスイセン
スイセンの花。きれいですが・・
「次はスイセンです。葉っぱをみてください。ニラと間違えて食べてしまうことがあるのです」
食べるとどうなりますか?
「食べてから30分以内で吐き気、おう吐、頭痛などが起きます。球根もノビルやタマネギと似ているので気をつけて」
見分けるポイント
「ニラと違うところは『におい』です。ニラは特有のにおいがありますが、スイセンの葉はにおいがありません」
なるほど~。
ギョウジャニンニクとイヌサフラン
「これはイヌサフラン」
きれいな花ですねえ。
「はい、でもね、芽や葉をギョウジャニンニクと間違えてしまうことがあります。
食べると、おう吐、下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難、最悪の場合は死んでしまいます」
これも強い毒ですね。名前もサフランに似ているし、間違えそう。
「でもサフランとは別の種類なのですよ。サフランには毒はないし、雌しべがサフランライスなどに使われ、食べることができます」
見分けるポイント
「ギョウジャニンニクの芽生えは特有のニンニク臭がありますが、イヌサフランの芽生えには臭いがありません。またギョウジャニンニクの芽は、葉が1~2枚。イヌサフランの芽は、葉がたくさん重なり合っています」
ギョウジャニンニクの芽生え。
イヌサフランの芽生え。
ギョウジャニンニクの葉っぱは少ないですが
イヌサフランの葉っぱは多い。何枚も重なっています。
山菜採りもご注意
「春は山菜採りをする人もいますが、山菜と間違えて毒のある植物を食べてしまうこともあります」
フキノトウとハシリドコロ
これはフキノトウですね。そしてその下の写真は・・。
「これが毒のあるハシリドコロ。似ているでしょう?」
見分けるポイント
「フキノトウの外側にある苞(ほう)という部分には白い綿毛がびっしり生えています。また苞の中にはつぼみがたくさん詰まっています。
一方ハシリドコロには芽に毛はほとんどなく、芽の中は葉が重なりあっています」
山菜採りをするにも、注意深くなる必要がありますね。
ニリンソウとトリカブト
「ニリンソウを山菜としてよく食べる東北、北海道では毎年のように中毒事故が起きているんです」
ニリンソウは白い花です。
こちらトリカブト。
ホントだ、葉が似てますね。
「トリカブトとニリンソウは花が咲けば違いがわかるのですが、葉だけだととても似ています。トリカブトの全体に毒がありますが、中でも根の部分は猛毒です。同じような環境に生えているので気をつけてください」
わ、わかりました。。花が咲いていないときは本当にわかりにくい。山菜採りをする方は十分注意してください。
毒もあるけど薬にも
あ、これ、知ってます。よく見ますよね。庭に植えている人もけっこういます。
「ニチニチソウです。これも有毒なのですが、抗がん剤の原料となる成分が含まれているのです」
こんな身近なお花がガンの薬とは。意外です!
「ジギタリスも有毒ですが、葉っぱは強心薬の原料の成分が含まれています」
へええ。ピンクの鮮やかなお花がねえ。
スズランも毒ですか?可憐なのに・・。
「そうなんです。誤って食べてしまうと食後30分以内で吐き気、嘔吐、頭痛などをおこします」
小さな子どもさんは気をつけないといけないですね。きれいだから口に入れてしまうことがあるかも・・。
「でもこの成分も不整脈とか心臓の薬などに使われるのです」
「これはインドジャボク。これも有毒植物ですが、根は血圧を下げる薬の原料に使われます」
これ、うちの家の外に咲いてますよ。小さい白いお花がかわいいなあと思っていました。血圧を下げるのかあ。かわいいだけじゃなかった。
これらの植物は有毒ではあるけど、使い方次第で「毒にも薬にもなる」ってことなんですね。植物の力はすごいなあ。
珍しいケシ・アサの栽培も
薬用植物園では全国でも珍しいケシ・アサの栽培もしています。
どうして植えているんでしょうか?
「植えてもよいケシと植えてはいけない、法律で規制されているケシの見分け方などを保健所や警察などの職員に学んでもらいます。また薬学生に医療用麻薬の原料になることを学んでもらうためにも栽培しているのです」
植えてはいけないケシの花です。特別に許可をいただき撮影しました。
さらに薬用植物園では絶滅危惧植物も栽培しています。
いやあ、もっと紹介したい植物があるのですが、長くなってしまうのでこの辺で店じまい。
もっと知りたい方はぜひ薬用植物園に行ってみてください。
オドロキがたくさん、発見もたくさんありますよ。