多摩の山は任せて!
戦略広報課です。
以前もこのnoteで紹介した都レンジャー。その第三弾です。
「都レンジャー」とは都の自然保護指導員の通称。
前回は小笠原で活動する様子を紹介しました。現在都レンジャーは小笠原に9名、そして多摩に16名います。(令和6年7月現在)
今回は東京の山々を担当している多摩の都レンジャーがどのような活動をしているのか、レンジャーの笠原天生さんにお話を伺いました。
とにかく山を歩く
都内の自然豊かな場所には公園として指定されたエリアがあり、そこを「自然公園」と呼んでいます。多摩の自然公園は東京都の全面積の約2割を占めています。
「多摩の都レンジャーの仕事はこの自然公園を中心に行われ『保護』と『適正に利用してもらう』ことの両方を目指しています。多摩地域の自然公園は多くの利用者が訪れますから『適正に利用してもらう』ための活動が増えれば、結果的にそれが自然を守ることにつながるでしょう」
都レンジャーはまず現場を歩きます。自然公園を歩いて情報を集め、それを管理に生かします。
広大な範囲を管理するため、都レンジャーは4つの地区に分かれて活動しています。(高尾5名、奥多摩4名、御岳4名、檜原3名 令和6年7月現在)
これらの地区にはそれぞれ異なった特徴があります。東京都最高峰の雲取山を含む奥多摩地区では、奥深い山岳地での活動を中心に行います。利用者がたくさん訪れる高尾山を含む高尾地区では、利用者を相手とする活動がメインとなります。
「活動の中ではいろいろな事が起こります。現場で利用者と接する中、お願い事をする際の根拠となる指針が必要ではないかということで『東京都自然公園利用ルール』が作られました。なにか特別なことが書いてあるというより、利用ルールを広めていくことで自然公園をより良い場所にしていこうという目的があります」
東京都レンジャーの自然公園利用ルールガイド 東京の自然公園に行こう!
インフラをととのえる
自然公園にはいろいろな施設があります。道しるべ、トイレ、野外卓やベンチ、桟橋、鎖場【注】、丸太で作られた階段(土居木階段)などなど。東京都が設置している施設を管理することも都レンジャーのお仕事。
【注】登山者の安全確保の目的で鎖が取り付けられた場所
「私たちは歩道と呼んでいますが、登山道そのものが自然公園の施設なのです。登山道は自然公園のインフラ。これなくして、みなさんが自然公園を歩きまわることはできません。あちこちパトロールしていると施設の修繕が必要になる場所が見つかります。簡単なものでしたら、応急的に直接直してしまうこともあります」
道に土砂がたまれば鍬(くわ)でかきならします。また歩道への倒木があれば、あまり大きくない木については自分たちで処理。すぐに処理できないときは、注意を促す表示を設置することもあります。 倒れそうな木があるときも、人が多く集まったり歩いたりするような場所に注意の呼びかけを表示しています。
枯れ枝が人に落ちたら大変です。パトロールのたびに点検し、長い柄のノコギリで切断しています。
都レンジャーの使う道具は多種多様。ザックの中身も道具でいっぱいです。すべての道具は持って歩けないので使いそうなものを日々入れ替えたり、何かで代用できないか考えたりしています。その結果、いろいろな使い道があるものが選ばれます。
増える枯れ木対策
ここ数年、高尾山ではナラ枯れが進んでいて、枯れ木対策の緊急度が高くなっています。ナラ枯れとは「カシノナガキクイムシ」という害虫が媒介する菌に感染することで、ミズナラやコナラなどの木が枯れる伝染病のこと。この現象は丘陵地から低山にかけて目立ちます。
「高尾山の山頂にあったナラの仲間であるカシワの木2本は、去年の夏以降急速に枯れ、倒れてしまう危険もあったため伐採しました。山頂付近の木がなくなるのはちょっと寂しいですが、特に多くの利用者が集まる場所ですから、やむを得ないかなと思います」
パトロールは続くよ
大きな台風や大雪の後には、登山道の点検を集中的に行うことがあります。そのような場合は他の予定を全部振り替え、登山道をひたすら歩きまわることに。
「2019年の台風19号のときは、登山道や桟橋が流されるなどの被害を受けました。このとき登山道の調査のために、連日で1,000メートル近くを上り下りしました」
「夏の暑い時期や冬の足元が凍る中での巡回もあるので、事故を起こさないよう、安全に気を付けながら活動しています。ただ、季節とともに日々移り変わる自然を感じながら仕事ができるのは良いですね」
都レンジャーは巡回中、青い帽子を被り、Rマークの付いたウエアを着用しています。多くの場合2人1組のペアになって巡回しています。
Rのマークをつけたウエアの笠原さん。「都レンジャーを山で見かけたら、声をかけてくださいね」
都レンジャーの活動は月に1度発行している「東京都レンジャーニュース」で見ることができます。
Tokyo Natural Parks(Instagram) 、環境局X(旧Twitter)、各ビジターセンターでも紹介しています。 ぜひご覧ください。